パティのこと ― 2017年01月26日 10:15
ノーベル賞の授賞式でのパティ・スミスのパフォーマンスを見る。
文学賞を受けたボブ・ディランの代理で、彼女が受賞コメントを読み、ディランの歌を歌うという。
私は、ボブ・ディランのことはほとんど知らない。彼がノーベル賞にふさわしいのか、あるいはノーベル賞がディランにふさわしいのか、一時にぎわっていた話題についても、全く意見はない。
一方、私はパティ・スミスの、35年来のファンである。「パンクの女王」と呼ばれ、ガリガリの身体に黒いスーツという中性的なルックスと、既成の女性性をぶち壊すような歌い方に憧れた10代を過ごした。
なので、スミスがディランの代理を務めるというニュースには、少なからず興奮していた。
幸い、そのパフォーマンスはYouTubeにアップされていた。
厳粛な授賞式会場で、歌いだしてすぐ、彼女が緊張しているのが分かった。彼女は少し歌い、そして歌うのをやめた。顔を赤らめ、「ごめんなさい。とても緊張しているの。もう一度やり直します」
私はそれを見て、どうしようもなく感動した。
歌詞を忘れたというより、緊張のあまり、気持ちが入らなかったのだろうと思う。が、彼女のようなベテランのアーティストが、過ちを認めてやり直すのは、驚くべきことに思えた。
そして彼女は、今度は力強い声で歌い始めた。
昔々、私が二十歳のころ、成人式は振袖一色だった。私はその、あまり意味のない流行に反抗し、黒のジャケットに白いシャツ、細い黒のネクタイをして、つまりはパティもどきで、成人式に行った。パンツ姿の女子は、本当に私ひとりだった。心優しい友人たちは遠巻きに手を振り、「相変わらずやねー」と声をかけてくれたが、だれも近づいては来なかった。それは本当に子どもじみた抵抗だったが、私にとっては、愉快な記憶として残っている。
パティは燕尾服とドレスばかりのホールで、やはり、黒のジャケットと白いシャツを着ている。しかし、彼女が世界に示したのは、反抗心ではなく、私たちは誤りを認め、再びやり直すことができる生き物なのだという、明快な勇気だ。
染めていないグレーのロングヘアが、彼女にも私にも、ずいぶん時が経ったのだと思わせた。
彼女の歌は素晴らしく、これだけで、ディランにノーベル賞を授与した価値はあると思った。そして、彼女が代理を務めることになるまでのいきさつを、なんとなく想像した。映画が一本できるくらい、いろんなことがあったんじゃないだろうか。
文学賞を受けたボブ・ディランの代理で、彼女が受賞コメントを読み、ディランの歌を歌うという。
私は、ボブ・ディランのことはほとんど知らない。彼がノーベル賞にふさわしいのか、あるいはノーベル賞がディランにふさわしいのか、一時にぎわっていた話題についても、全く意見はない。
一方、私はパティ・スミスの、35年来のファンである。「パンクの女王」と呼ばれ、ガリガリの身体に黒いスーツという中性的なルックスと、既成の女性性をぶち壊すような歌い方に憧れた10代を過ごした。
なので、スミスがディランの代理を務めるというニュースには、少なからず興奮していた。
幸い、そのパフォーマンスはYouTubeにアップされていた。
厳粛な授賞式会場で、歌いだしてすぐ、彼女が緊張しているのが分かった。彼女は少し歌い、そして歌うのをやめた。顔を赤らめ、「ごめんなさい。とても緊張しているの。もう一度やり直します」
私はそれを見て、どうしようもなく感動した。
歌詞を忘れたというより、緊張のあまり、気持ちが入らなかったのだろうと思う。が、彼女のようなベテランのアーティストが、過ちを認めてやり直すのは、驚くべきことに思えた。
そして彼女は、今度は力強い声で歌い始めた。
昔々、私が二十歳のころ、成人式は振袖一色だった。私はその、あまり意味のない流行に反抗し、黒のジャケットに白いシャツ、細い黒のネクタイをして、つまりはパティもどきで、成人式に行った。パンツ姿の女子は、本当に私ひとりだった。心優しい友人たちは遠巻きに手を振り、「相変わらずやねー」と声をかけてくれたが、だれも近づいては来なかった。それは本当に子どもじみた抵抗だったが、私にとっては、愉快な記憶として残っている。
パティは燕尾服とドレスばかりのホールで、やはり、黒のジャケットと白いシャツを着ている。しかし、彼女が世界に示したのは、反抗心ではなく、私たちは誤りを認め、再びやり直すことができる生き物なのだという、明快な勇気だ。
染めていないグレーのロングヘアが、彼女にも私にも、ずいぶん時が経ったのだと思わせた。
彼女の歌は素晴らしく、これだけで、ディランにノーベル賞を授与した価値はあると思った。そして、彼女が代理を務めることになるまでのいきさつを、なんとなく想像した。映画が一本できるくらい、いろんなことがあったんじゃないだろうか。
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